バッハ


 

来日ツアーから帰宅して、ずっと頭にあったのは、バッハ・シャコンヌ。

この曲は来日ツアー全てのコンサートプログラムに入れて演奏したけれど、全く理想に届かず上手く弾けなかった。それでも地方公演の時には演奏中に止まりはしなかった。なのに...何と!一番最後の大事な東京公演では途中で止まってしまい、弾き直してしまったのである。

その日は情けなくて眠れず、翌日もずっとずっと悔いが....

どうしてそうなったか?

ずっと頭に曲が鳴りながら...考えてた。忘れようとしたけれど忘れられなくて、各場所での演奏を思い出しては原因を考えてた。

この曲を弾き始めて3年目。一生演奏していける名曲だとは思ってたけれど、これほどまでに深く、メンタルも伴いステージ上(お客様の前本番)で演奏するのが恐ろしいことになるとは?!

とにかく、まだまだだと底に落ちた。

音楽的にもテクニック的にも難曲だと改めて実感し、帰宅して15日間ぐらい、ずっとイメージトレーニングでこの曲、この音楽を頭で歌っていたけれど、実際に楽器で練習始めて、しかし、これまでの練習じゃなくて、違うスタイルで練習してみようと試みた。メトロノーム46速度、16分音符にして練習を重ねてみた。先ずは最初から最後まで同じテンポで演奏できるようにしてみた。この17分の大曲を同じテンポで演奏できるようになるまで2週間ぐらい?!かかり、その後は意外と音の外しが無くなった。

マリンバはマレットという撥を4本持って演奏するので、その4本のマレットのステッキング(手順)が重要...本番中に1音でも違う手順で弾くと混乱するので、楽譜の音だけじゃなく、それに伴うステッキングも完璧に記憶するように努めた。又ある評論家の方の批評にレガートも足りないとあったので、それも克服しようと頑張った。

そして1ヶ月後(4月中旬)に夫に聴いてもらったら....

『タイムに囚われて、私の歌心が聴こえなくなったと?!』

そこで次は、メトロノームを外し、今度は自分のエモーショナルで自由に自然体で演奏できるように練習の仕方を変えて、毎回録音しながら、大きなフレーズ、レガート、ダイナミックを確かめながら、フレーズごとにタッチ(音色)も変えれるように練習してみた。

そして、1週間後に又夫に聴いてもらったら?

『素晴らしい!もうこのまま変えずに演奏を続けて!』

と言われ...ちょっと安心。

もちろん、これは基本形の事なので、演奏する度に感覚や、感情が違うので、やっぱり1回1回違う演奏になってしまう。。

でも、そういうバッハのスポンテニアスなところが大好きだ。

これから、まだまだこの作品、バッハとの旅は続くけれど、近いうちに3年目のバッハ・シャコンヌをビデオ録音したいと考えていたところ....

そのチャンスが早くも?!

5月16日私が使っているマリンバメーカーDeMorrowの本拠地アーカンソーで彼が十年がかりで製作した世界に1台しかないアーティストモデルでvideo録音できるという...デモロウ氏が1音1音、特別に良いローズウッド鍵盤を集めた、2019年のカーネギーリサイタルでもお借りした素晴らしく余韻と音色が素晴らしい鍵盤での演奏!

もちろん決行!

直ぐにアーカンソー在住で素晴らしい打楽器奏者の友人KAEさんに連絡を取り、ビデオグラファー、録音エンジニア、デモロウさん、大学のコンサートホールとかのアレンジを頼んでオーガナイズして頂きました。そのお陰で、私の日本ツアー後2ヶ月間の成果を実らせる事が出来て、自分にとって、これまでで一番良い演奏ができたと信じます。本番2回通しただけでOK、編集もしなくて良いという我ながらびっくりの快挙!

止まらなかったし(笑! 

完全にリベンジを果たして爽快な気分で帰宅しました。

自分に決着をつけに行ったアーカンソーの旅は充実し....これで当分このバッハ・シャコンヌはお預けして、次の新しい音楽に取り掛かれます。

しかし、又この曲を演奏する時は、悩むのだろうなぁ〜こういう一生かけて演奏できる作品に出会え、取り組むことが出来る事を幸せだと実感しています。

是非、私の三年目のバッハ・シャコンヌを聴いてみてください!(上にYouTubeリンクしています)

日本でコンサートにご来場くださった方々には心から聴いてもらいたいと思ってます。ちょっとした成長を感じていただければ嬉しいなぁ〜。

今(5月末)は6月に行うNYパワーステーションでのレコーディングの為に必死にチックコリア作品7曲を猛練習してるところですが...リズム&ハーモニーを除けば音楽的にはバッハより容易く、悩みは技術面のみで楽しく練習できてます。

考えてみるとバッハは三百年以上も語り継がれて演奏されてきた音楽....マリンバなんてまだ楽器が出来上がってからそこ100年も満たない。

そう考えればマリンバで演奏するバッハが音楽的に難しいのは当たり前...

チックの曲はそこ10〜20年ほど。実際に作曲家本人を知ってるし、曲も書き下ろしてもらってる…大好きだから自然体で演奏できるのである。

それぞれの音楽に向かう時に演奏者も又その背景や深さを感じることはとても必要なこと…バッハの闇は深いけれど、まだまだ頑張ります!

感謝をこめて。Love,MIKA






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