湯布院と博多公演(プログラム掲載他)に向けて。
私達は、東京でコロナ感染者が爆発して、政府から緊急発令が出された翌日1月8日から
熊本へ移動してキャッスルホテルで数日間過ごし、今は湯布院にいて......
10年以上もの親友で大支援者でもある福岡在住末永浩毅さん所有の別荘で過ごしています。
惜しみなくアーティストを御支援くださる末永さんには言葉にならないほど、
何と贅沢な毎日でしょう。こういう生活を3週間も出来るなんて信じられません。
懐かしい亀の井別荘内カフェ天井桟敷もあの、素敵なままでした。
此処にいたらコロナ渦中にいる事を忘れてしまうほど時間が止まった感じがします。
さあ!あと1週間後から演奏ツアーが始まります!
博多からのスタートなんですが、まだコロナ感染者数も収まってないし、
福岡も緊急発令出ててキャパ40%の客入り。
ホールは緊張感いっぱいだろうなぁ〜
少しでも音楽で、そういう心配を一瞬でも忘れさせるようなコンサートにしたいです。
残念ながらスペシャルゲストのシンガー石川セリさんはドクターストップで
出演叶わず。。大好きなセリさんにお会いできず残念でした。コロナ恨む!
今日も博多での全プログラムを二人で通して曲順がこれで良いのか
確かめました。
演奏家にとって1曲ずつの個人練習とリハーサルは普通にしてますが、
コンサートのプログラムを順番に全曲通すのはかなりの訓練になります。
本番と思って集中するようにと録画録音もして後で聴き返すと、とても勉強になります。
これだけでも2時間弱になりますので、終わった後はヘトヘトですが、
あと1週間のラストスパートには、もってこいですね。頑張ります!
一応、湯布院で行きたかったスポット、亀の井別荘、無 量塔 ”アルテジオ”ミュージックギャラリー&カフェ(ムラタ)にも行けたし.....
博多公演の主催者の催よしえさんも打ち合わせで湯布院へ来て下さりコミュニケートも
万全にできたし......
知らなかった素晴らしいイタリアンレストランCoji Cojiも発掘できたし、
博多コンサート プログラム
1、ニュー・シネマ・パラダイス E.モリコーネ作曲 布施威編曲
昨年の3月、世界中に閉塞感が漂うパンデミックの最中、この曲の演奏を通して、人々に、特に子供達に安堵の気持ちと希望を届けたいというリチャードさんの想いに賛同し、この譜面を書きました。
大地のように横たわり深く包み込むようなマリンバのトレモロから曲は始まります。その上に重なるように現れる低音域のメロディーからは、クラリネットならではの包容力と共に、リチャードさんの愛情が静かに染み渡るように届くでしょう。その後も敬虔な気持ちで音楽を紡ぐ2人の演奏は、どこまでも純粋でそして天に祈りを捧げるように響きます。
比類無き美しい旋律とそれを支えるハーモニー。人々に癒やしをもたらすこの曲は、2人の懐の深いアンサンブルをゆったりと味わえる曲の1つでしょう。(文・布施 威)
2、バッハ シンフォニア第11番 ト短調 BWV797 J.S.Bach作曲
原曲はピアノなのだが、ミカはこの珠玉の作品を、我らが親愛なる友人ピーター・ゼルキンが、小さなヴァーモントの街角で古いアップライト・ピアノでまるで魔法のように演奏し、それを彼の携帯電話で録音しているのを見たときに見出したのである。とても感銘を受けた彼女は、二声のマリンバとクラリネットのパートを一つにして演奏してみようと思い立ったのだ。(リチャード・ストルツマン)
3、シャコンヌ〜無伴奏バイオリン パルティータ第2番二短調 BWV1004より
J.S.バッハ作曲 ミカ・ストルツマン編曲
ある研究家によると、この曲はバッハが長い旅から帰宅したら、なんと愛妻マリアが
事故で亡くなっていて、その悲しみ、寂しさ辛さを音楽にしたとありました。
私はこの曲を編曲するにあたって
「バッハが生きててマリンバの為にこの曲を書いたなら?」と想像しながら、オリジナルには忠実に、マリンバに効果的な音を深求しアナライズしたのです。
この曲は2018年11月末から取りかかりました。音とりが終わったぐらいの12月末にピアニストPeter Serkinさんのバッハ曲の譜めくりをする機会があり、彼のバッハの演奏を真近で聴くことが出来ました。彼自身と楽譜が一体化して音楽が溢れ出るかのようなオーラから大いなるインスパイアを受けたのです。同時に「マリンバでこのレベルに達することは出来るのだろうか⋯」と自問自答しました。
しかしピーターさんのフレージングやアーテュキュレーション一つ一つの音の粒極め細やかさ、ダイナミックス、いかに楽譜を読み取る事が重要かと…かなり学べたので、理想に向かって励みもうと一気に力が出たのです。それから一心不乱。新年早々から2月末のレコーディングまでは仕事を一切入れずにFBもせずに7〜8時間ずつ毎日朝4時まで、自分の演奏を録音録画しては聴き⋯直すという事を246回もしながらマリンバソロに編曲して練習に励みました。あらゆるバイオリンの名録音を聴いて解釈を学び、ピアノ、ギター、弦楽合奏などのバージョンなども全てチェックして、楽譜も取り寄せ、あらゆる研究もしてみました。
この曲だけはずっと毎日弾いて練習しています。
日々新しい発見があるほどバッハの音楽は深すぎます。
永遠に勉強しながら弾き続けるのだろうなぁ~と思います。
こういう一生かけて演奏できる音楽と出会ったことに今更ながら幸せを感じています。
(ミカ・ストルツマン)
4、エアー 武満徹作曲
この曲は武満氏の遺作でフルートソロ作品であるが、リチャードは武満さんと盟友であった為に遺族からクラリネットで演奏することを許されている。
5、バースデーソング フォーミカ 2019 チックコリア作曲
チックコリア氏からミカに捧げられた作品であり、チックが初めて書き下ろしたマリンバソロ作品でもある。
Birthday Song for Mika
It was a great pleasure to write this Birthday Song for my friend Mika.
She makes my compositions come to life! —CHICK COREA
(翻訳)
このBirthday Songをわが友ミカのために書くことは大きな喜びでした。
.彼女は私の書いた作品に命を吹き込みます。
(注)作品は紙に書かれた音符に過ぎないが、ミカさんが演奏することによって生きた音楽になる、といった意味合いだと思います。
6、間奏曲 作品118-2 ブラームス作曲 布施威編曲
ブラームスが2つの最重要作品、クラリネット・ソナタ作品120の1および2を作曲するわずか数カ月前に書かれた。既にクラリネット3重奏、作品114、および傑作のクラリネット5重奏曲作品115を書き上げたばかり。クラリネット奏者リヒャルト・ミュールフェルトとの貴重な人間関係により、彼はまさに最後の比類なきソナタを創作しようとしていた時である。
感受性と想像力をもって私を彼女のマリンバの軌道に引き寄せてしまったミカは、日本人作編曲家の布施威氏を選んで、この優しくて哀愁に満ちた小品を、ピアノ2手から我々の4手の響きのブレンドへと仕立て直してくれた。とても感謝している。
(リチャード・ストルツマン)
(休憩)
1、無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調 J .Sバッハ作曲 ミカストルツマン編曲
バッハ・シャコンヌで達成感を味わい、もう一曲何かシャコンヌとカップリングできるようなバッハの作品にチャレンジしたいと思い、この偉大なるチェロの為に書かれた1曲を選びました。
バッハが新しい奥さんアンナとを過ごし始めた喜びの音楽という気持ちで演奏しています。
原曲にはプレリュード除く全ての楽章にリピートが付いていますが、私は、あえてこの第3番全てを大きなドラマティックな1曲と捉えてリピートしていません。
お気に召すかしら?!
(ミカ・ストルツマン)
2、 クロマティックファンタジー J.Sバッハ作曲 リチャードストルツマン編曲
バッハの半音的幻想曲は音楽の最も基本的な要素である半音の、力と情念の集大成である。
本音階におけるすべての半音を探求するために、良く調律された鍵盤楽器によって本来演奏される
曲であるが、この幻想曲は奇跡的な音符の金色の連なりであり、最後の数小節で、バッハは2つの
半音階、DからDとAからA、がからみあいながら同時に降下するよう巧みな処理をしている。(リチャード・ストルツマン)
3、アニマ2020 〜 ザ ワクシングライト ジョンゾーン作曲
この作品はゾーン氏から昨年5月17日エリックサティの誕生日に届いた新作でストルツマン夫妻に捧げられている。
4、オーヴァー・ザ・レインボー〜 キースジャレット1984年東京ライブによる ハロルドアレーン作曲 布施威編曲
しばしば私は、クラシック音楽の先輩大作曲家の手法や作風を模して誰々風に書くという事を好んでします。そのままの引用やあからさまな真似はコピーに過ぎないのですが、咀嚼して自分の引き出しに入れたものを自らの音楽語法として表出できたときには、大きな幸せとなります。そして何よりそれは、先輩達がその手法を用いて作品を生み出した時と同じ感覚と過程を味わえているのではないか、という喜びを感じる瞬間でもあります。
この「オーヴァー・ザ・レインボー」はジャズ・ピアノの巨匠キース・ジャレットが過去のコンサートで行った即興演奏を、ミカさんの依頼により私なりの語法を添えてマリンバ上に再現したものです。ご存じのようにキース・ジャレットはクラシック音楽にも造詣が深く、その細部に分け入ってみると見事な構造に心が躍りました。
ミカさんがこの過去の即興演奏を題材にするのは、オリジナルが生み出された過程を、そしてその時演奏者の中で何が起きていたのかを体感したいと願うからではないでしょうか。常に自分を正直に見つめ高めることに貪欲な彼女のそのような姿勢に、私自身大変共感しながら書きました。
詳しくは語りませんが、クラシックとジャズはアプローチの違いは様々あっても「必然性」というキーワードで強く結びついていると、私は常日頃考えています。ジャズ・ミュージシャンの多くがクラシック音楽の作曲家やその作品に傾倒するのも、その共通点が双方にとって大きな宝であるからでしょう。両ジャンルを行き来するミカさんの今宵の演奏は、この曲をどのように語ってくれるでしょうか。(文・布施 威)
5、ミッシェル 挟間美帆編曲
ビートルズが1965年に発表したアルバム「ラバーソウル」に収録されている作品。ポール・マッカートニーが若い頃に即興的に作り出した曲から派生した、フランス語と英語を混ぜた熱烈なラブソングです。
もちろん歌詞だけを見れば熱い愛の言葉が並ぶのですが、私にとってはこの音楽がその愛を素直に伝える楽曲に感じられませんでした。どこか物哀しさや憂いを帯びているようで、そこがさらにこの曲の魅力を引き出している。編曲するにあたり、楽曲の持つ”影”を活用してもう少しドラマとして発展させることに尽力しました。
演奏してくださるミカさんとリチャードさんに御礼を申し上げます。(挟間美帆)
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